きんいろモザイク Pretty Daysを公開初日に10回見に行った話

きんいろモザイクの新作エピソード、きんいろモザイク Pretty Daysが公開されました。

タイトルの通り、10回見に行きました。
舞台挨拶で4回見に行き、その他通常の上映で6回見ました。

まず、新宿バルト9で8:00〜の回を見ました。
少なくとも関東は最速だったようなので、まず一回。

その後は舞台挨拶+本編で4回。
舞台挨拶で声優さんが「何度でも見に行ってください!」と言っていましたが、まさかこんなに見ることになるとは思いますまい。

見に行ったローテーションとしては、まず新宿バルト9で8:00からの回。その後舞台挨拶を4回挟み、MOVIXさいたまで1回、深夜も上映しているバルト9にもう一度戻って4回でした。
もう一回見ようと思ったのは舞台挨拶3回目、本編を見て4回目でした。そのときは6回目のチケットをとったのですが、6回目を見て、「もっと見よう」と思い、レイトショーをやっているバルト9へ行き、その後はもう一回、もう一回という感じでどんどん見たくなり、最終上映まで見て10回まで見たのでした。




この辺から下は、ネタバレとかあると思うので、嫌な人は見ないでね。



(※)なお、以下で記されているセリフ部分は「こんなこと言ってた(大意)」であり、正確性に欠くことをご承知おきください。正確にセリフ覚えるってなんだよ。メモでも取ってんのかよ。





初回を見に行った話。

正直な話、新作エピソードはすごくうれしかったものの、原作で内容をすでに読んでしまっていた(学校祭で演劇をする話は、第5巻55ページから、綾が忍との関係に悩む話は第5巻103ページから)こと、上映時間が50分であったことから、どうにかファン向けのフィルムとして、うまく引き伸ばしたものなんだろうと、内心みくびっていました。

とはいえ、やはり最速で見たいもの。眠い目をこすって早起きをして、バルト9へ向かいました。

広告が終わって本編スタート。
まず最初のシーンは、綾のセリフから始まります。
もうその声を聞いて、胸の奥から、得も言われぬ感情が出てきて、涙が目にあふれました。

綾の役を務めた、種田梨沙さんは、9月から休養を発表しています。
私事ながら、愛聴していたラジオ番組『夕実&梨沙の東京ラフストーリー』(パーソナリティ:内山夕実さん、種田梨沙さん)が、(おそらくその影響を受けて)9月末に終了してしまったことで、深いショックを受けていました。

もうあの声が、綾の声を聞けないんだと思うと、すごく悲しい気持ちになって、一人部屋でむせび泣いていました。

休養の発表を受けてか、「Pretty Daysのアフレコは休養前に終わっている」と公式に発表がされましたが、しかしながら、薄ぼんやりとした不安や喪失感が胸の内を何度も何度も巡っていました。


最初の綾のセリフを聞いたとき、ああ、やっと彼女たちが、誰一人とて欠けることなく戻ってこられたんだ。戻ってきたんだと思うと、安堵とどうしたらいいかわからない感情が一気に怒濤のように押し寄せて、目から涙があふれました。

しかし、そこで泣いていてはどうしようもありません。


この映画は、綾が「忍にとって私は、そこまで大切ではないのでは?」と思い悩むところから始まります。

忍と一緒にいる陽子は幼馴染、アリス・カレンは、忍が愛してやまない金髪の持ち主。その両方でもない綾は、その3人ほど大事な友達と思われていないのではないかと悩み始めます。


そんな中、今は学校祭の準備期間。
台本と衣裳のリーダーを務める忍は大忙し。

休日返上で、自宅で制作にとりくみ、他の4人も手伝うことになりました。

その途中、忍は急に何かを思い立ち、姉の勇を連れて外出します。
綾が「私も行く」といいますが、忍は断り、綾は少し悲し気。


忍が出かけた後、陽子は、何かしらのサプライズを考えているのではと見当をつけます。
アリスとカレンは「どうしてわかるの?」とやや興奮気味。陽子は「幼馴染だし、というかわかりやすいんだよな」と言い、「な、綾?」と同意を求めますが、綾は拗ねてしまいます。

この後、忍・綾・陽子の高校受験の話に入り、その後学園祭当日を迎えます。

綾の「ちゃんと話して伝えたわ。私の第一志望はここだって」っていうセリフでもうダメでした。
鼻の奥が苦しくなって、涙がぽろぽろ出てきました。

そこから5分後、学園祭のシーンにうつり、それと同時にShining Starが流れます。ここでさらに涙が。

果たしてなんの涙のなのか、全くわかりませんでした。でも、もうすぐ物語が終わってしまうという惜別の悲しみではありませんでした。


友情をかみしめる歌を背景に、ああ、やっと綾が一歩を踏み出して輝くんだと、頑張りが報われたような、うれしさの涙でした。


そして最後「私、この学校に来て、本当によかった」と綾。ここでもうダメでした。頬を幾筋もの涙が伝いました。



以下、考察です。
まあ、公式の解釈なんて知る由もないので、オタクはこう見たぐらいのものです。




綾は、これまで、人前で人を引っ張り、主役になろうとしませんでした。
劇中でも「裏方に決まってるでしょ」というセリフから読み取れるように、人前に出たがらないのでしょう。

それは、小学生時代、緊張のあまり失神したというトラウマからでした。

その一方で、綾は演技指導や受験勉強など、見えないところでみんなを助けていました。
縁の下の力持ちです。

劇中でも、綾はたいてい誰かに手を引っ張られています。
劇中の1期の回想シーンでもありましたが、中学時代、手を取って来たのは陽子であり、声を掛けてきたのは忍でした。

どうにも決心がつかない時は、自分のカバンの持ち手を強く握って、舞台の上で怖くなってしまったときは、自分の手を強く握って。
忍から友情という絆をプレゼントされた時でさえ、忍から手を握られていました。

そんな綾が、忍を助けたい一心から、劇のお姫様役の代役を引き受けます。お姫様役は主役。みんなを引っ張る役です。
でも、やっぱり怖い。せめてお面があればと怖がります。


そんな中、カレンの謎アドリブがあり、アリスと陽子、烏丸先生が友情出演として壇上に上がります。
「あなたをお守りします」とアリス。
「いろんな人が変装して隠れていた」と陽子。

人前に出て、壇上でオロオロする綾に対して「あなたは一人じゃない。私たちが守る」といっているようです。

最後、綾は少しはにかんだような顔で陽子の手を取ります。
みんなを支えて、人前では誰かに手を取られていた綾が、みんなに支えられて、今度は人前で手を取ったのです。

一歩踏もうか踏むまいか、悩んで考えて二の足を踏みがちだった綾が、自分の力で一歩を踏み出した瞬間でした。

支え役だった綾が、Starring=主役となった瞬間だったのです。

綾が陽子の手を取ったときに大きく流れるのは、Shining Starの「いつまでも君はあこがれの人」という部分です。

これは誰に向けているものなのか。綾が陽子に対して向けているものなのではないのでしょうか。

綾が陽子に対して好意を抱いていることをにおわせる描写がありますが、それと同時に、忍と幼馴染だった、それほど親密な友情を築けていたことへのあこがれだったのではないかと思います。
あるいは、人の手を引っ張っていけるような、物怖じしない力。いろんなものを持った陽子へのあこがれではないでしょうか。



さて、物語の最後は、「最近思うことがある。しのと私は友達。これからもずっと」というセリフで終わります。
また、序盤では、「最近少し思うことがある。しのと私は中学校からの友達。だけど・・・」というセリフから物語が動き出します。

最初に綾が思ったのは、小さな疑念でした。

それが、物語の最後には、疑念よりが晴れ、それよりも強い確信が生まれました。
金髪じゃなくたって、幼馴染じゃなくたって、いいんだ。忍が友情という絆をくれた。忍がこれからも友達でいてほしいといってくれた。
だから友達なんだ。何も持っていなくても、このままの私でも友達なんだと気付いたのでしょう。

1期2期を見返してみても、綾にスポットライトが当たった話がそれほどありませんでした。
このあと、アニメの展開がどうなるかは分かりませんが、今現在、最後の舞台で、映画という大舞台でスポットライトが当たった綾。

主役は遅れてやってくるとは言いますが、もしかしたら、綾こそが本当のStarringだったのかもしれませんね。



以下、その他ちょっと気付いたこと。

・忍の家の掛け軸にあるダルマの絵は、それぞれRhodanthe*のカラーに分かれている。表情もまちまちなので、それぞれのメンバーを意識したものかも。

・綾の失言シーンは、1期でも似たような場所で言っている(2話:「あれは多分東京行きよ」)、2期では、同じ雨上がりのシチュエーションで言っています(4話:「あと、嫉妬っていう意味もあるのよね」)

・桜の散る中、忍と陽子が手を握るシーン→1期OPで忍とアリスが手を握る構図に酷似(「きみといっしょ」のあたり)

・烏丸先生の応援歌、トーテムポールの歌。映画では中学時代の忍に。2期6話では、在りし日の久世橋先生に歌っています。

・これは、舞台挨拶で声優さんも言及していましたが、Happy★Pretty★Cloverの歌詞「絶対スマイル!問題ない!」は、1期OPのJumping!!の「問題なんか何もないよ」、2期OPの「絶対笑顔で」からとられているとのことです。

・Happy★Pretty★Cloverの「Say Hello」も、1期の番線ポスターのキャッチコピー「You say ハロー I say こんにちは」からとられているのかも。

・劇場版OPでは、クレジットの部分が少し変わっています。1期2期では「CAST」表記でしたが、劇場版OPでは「STARRING」と変わっています。ED「Starring!!」にひっかけたもの?あるいは、みんなが主役という意味なのかもしれません。

・OP映像は、1期2期Opでもあった、花びらでのシーンチェンジや、2期であった、カレンが猫に気を取られる、走って学校に行く、最後は5人手をつないでゴールイン、猪熊ダンスの場所や、1期OPで通った通学路を通るなど、過去のOP映像を踏襲しています。なお、1期2期のOPでは、朝の支度をする忍とアリスでしたが、劇場版では、朝の支度をするのは綾になっています。ここからも、綾が物語の主軸になっていることがうかがえます。

・忍の部屋に飾られている写真は、過去の1期2期のシーンの名場面がいくつか貼られています。でも、誰が撮っている設定なのでしょう(5人とも映っていると思われる写真もあります。多分勇かな)

・忍の部屋にあるカレンダーは10月で、コスモスの絵があしらわれています。なお、2014年に行われたRhodanthe*のコンサート「ハロー*コンニチハ!!」では、各楽曲を月にあてはめていました(例:はるいろアネモネ→4月、さつきいろハルジオン→5月)。この場合、10月に当たるのは、綾のキャラソン「夕焼けいろコスモス」です。

・1期OP「Jumping!!」のCD帯のコピーは「いつまでもみんな一緒に!願いを込めて…。」で、劇場版OP「Happy★Pretty★Clover」のCD帯のコピーは「これからもずっと一緒だよ!!」です。いつかの願いは、永遠の約束になりました。

最後に、種田さんに関して。

もう映画に関係ないんですが、映画を見てより強く思ったのでここで。
本編での綾や、綾のキャラソンを聞いていて、綾というキャラクターは、非常に心の機微が難しいなと感じました。

何度も言ってしまっているのですが、綾は常に何かしたい、とくに、素直になりたいという思いを抱えていながら、どうにも決心がつかなかったり、乙女すぎるほどに乙女です。
キャラソンも作品の一環に含めるかは議論が分かれるでしょうが、それも含めるとしたら綾の、明日の自分や神様にお願いして、自分が変わったら・・・と思うような、どうしようもなくて、やるせないような綾の気持ちを、過不足なく完璧に演じ切られるのは、種田さんだけなんだと強く思いました。

私も、あまり声優さんに明るくはないのですが、はっきり言って、他の声優さんが声を当てた綾が全く想像できません。

劇場版での綾も、思い悩んだり、拗ねてみたり、なんとか頑張ってみたり、一つ決心をしたり、色々な綾がいました。
それを見事に演じ切りました。

私は、ずっとシノが好きでした。でも、この劇場版を見て、綾が大好きになりました。「がんばって」と思わず応援したくなりました。人にそう思わせ、涙をボロボロ流させる演技はそうそうあるものではありません。

間違いなく、この演技あってこそこの傑作だと思います。

種田さんは、現在休養をしていますが、その直前に、こんなに素晴らしい演技をしてくれたことは、作品のファンとして、感謝してもしきれないほどです。

本当にありがとうございました。そればかりを言うしかありません。
いつか、種田さんがまた復帰して、綾を演じてくれることを願ってやみません。

そう感謝を述べたところで、そろそろこの記事もおしまいにしようと思います。


Pretty Daysは、非常に深い作品です。何回見てもいいんです。何回でも見たくなるんです。

一般の人からしたら、同じ映画を10回見るなんて頭のおかしいことです。しかし、人にそんな頭のおかしい行動を指せるほどの力を持った作品ともいえます。

何回でも見てみてください。1回目とは違った楽しみ、違った発見ができると思います。1期と2期を見ていたら、思わずニヤリとするような所もあります。

まるで、1期と2期は、このPretty Daysのために作っていたんじゃないかと思えるほどに。
見る人によって、どこを見るかによって楽しみ方は人それぞれ。見るたびに発見があるはずです。

きんいろモザイクPretty Days、この物語をどう楽しむか。そこにはPlenty Ways=たくさんの方法が用意されています。

どれを取って、どう楽しむかは、あなた次第であり、私次第です。
私もまだたどり着かない楽しみを見つけるために、まだまだ見続けたいと思います。